【札幌芸術の森】有島武郎旧邸を訪ねて|大正ガラスが誘う静かな時間

有島武郎旧邸_外観 ミュージアム

札幌芸術の森にある、近代日本文学を代表する作家、有島武郎が東北帝国大学農科大学(現:北海道大学)の教授だった大正2年に自ら設計し、それを元に造られた建物。当初は現在の北12条西3丁目にあり、学生寮としても使われていましたが、芸術の森に移築されてからは、有島武郎についての資料などを展示、保管しています。西洋風の瀟洒な外観で、今も当時の面影を残したままひっそりと森の中に佇んでいます。

有島武郎旧邸の見どころ|大正ガラスが映し出す当時の情景

靴を脱いで玄関をあがり中へ進むと、窓からの光が差し込む、開放的で明るい室内が広がります。入ってすぐ右手の和室には、有島武郎が亡くなる二ヶ月ほど前に訪れた新潟で、降りしきる雨を見ながら書いたという、美しい直筆の掛け軸が飾られています。「自分の気持もこの雨のようだ」という内容の書は、情緒的、感傷的な筆運びで、当時の有島の心の在りようそのままにも見えます。静かな和室から見える外の緑はとても美しく、特に天気が良い日には窓に嵌めてある大正ガラスの光の揺らめきがキラキラとして、とても美しいとのこと。掛け軸から伝わってくる心情と自然の情景とが対照的です。

有島武郎旧邸_大正ガラスの嵌められた窓の様子

切ない歌を詠んだ過去が、こうして現代の新しい光に照らされているのを見ると、あの時代だったからこそ、有島武郎は苦悩していたのではないか、もし今の時代に生きていればまた別の人生があったのではないか、と繊細で優しげで真面目なお人柄を感じさせる先生の写真をみて思うのです。

直筆の掛け軸や原稿、手紙にみる人間性

館内には教育者として、文学者として夫として、父として、というように様々な角度から有島武郎について展示してあります。最初の妻、安子の写真や子どもたちの写真、小説のモデルとなった木田金次郎との出会いについてのエピソードなどもあり、文学者としてだけではなく、一人の等身大の人間としての有島武郎に触れることができます。

有島武郎旧邸_展示風景

興味深かったのは、作家活動をしていた際の原稿の文字と、父母に宛てた毛筆の手紙の文字が全く違っているところです。原稿の文字はどちらかと言えばちょっとクセがあり、わりと小さめで自分のそのままを出しているような文字なのに対して、父母に宛てた手紙の文字はきちんと整えられ、お手本のような美しい文字です。普段は等身大のまま気持ちの赴くままであっても、親の前ではきちんとしてなくてはいけなかったのだろうか、などと思ってしまいます。先ほどの掛け軸の書と見比べ、その時々の有島武郎の思いにふれる時間を過ごしました。

【特別展示】今だけの企画展展示も

有島武郎旧邸_室内の展示の様子

現在開催されている展覧会「花と獣」の作品の一部も館内に展示されており、歴史的建築とともに、現代のアート作品とのコラボレーションを間近で楽しむことができました。大正時代の面影を残す静かな空間の中で触れる作品は、美術館とはまた一味違った独特の趣を与えてくれます。

過ごし方は、自由|心静かに自分だけの時間をたのしむ

館内におられたスタッフの方にお伺いしたところ、「あたたかい日差しの中で部屋でゆっくり過ごされる方もいらっしゃいます。どうぞ自由に過ごしてくださいね」とおっしゃっていました。

座って過ごせる椅子もあり机には有島武郎の著書が並んでいました。特に中国などではとても人気が高いそうで、中国語などの翻訳書もおいてあります。

天気が良い日に訪れるのはもちろんのこと、しとしとと静かな雨が降る日に訪れて、雨音を聞きながら読書を楽しむのにも最高の場所かもしれません。

有島武郎旧邸_内部の様子

施設情報・アクセス

  • 施設名: 有島武郎旧邸(札幌芸術の森内)
  • 入館料: 無料(※札幌芸術の森の駐車料金や、他有料展覧会は別途)
  • 開館時間: 9:45〜17:00(4月29日〜5月5日、6月1日〜8月31日は17:30まで)
  • 休館日: 月曜日(祝日の場合は翌平日)※4月29日〜11月3日までは無休
  • 住所: 札幌市南区芸術の森2丁目75
  • アクセス:
    • 地下鉄・バス: 地下鉄南北線「真駒内駅」より、北海道中央バス(2番乗り場)「芸術の森入口」または「芸術の森センター」下車すぐ
    • : 札幌市中心部より国道453号線を支笏湖方面へ約30分(有料駐車場あり)

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