札幌・道立近代美術館「ポケモン×工芸展」レポート|混雑状況・見どころ解説

吉田泰一郎氏作成のミュウツーが展示されている様子 ミュージアム

ポケモンに工芸と聞いて、なんだ、子供だましの展示か、というような顔をされる方もいるのではないでしょうか。伝統工芸というと、何やら高尚な感じがしますが、翻って「ポケモン」と聞いた途端に興味をなくすか、反対に興味がわくのか。意見がわかれそうなところです。

「ポケモン」が生まれたのは1996年2月27日。当時流行っていたゲームボーイのRPGソフトからでした。小学生を中心に爆発的にヒットし、30年経った現在では、あまり関心のない人たちにも「ポケモン」といえば通じるくらいのメジャーな存在になっています。

かく言う私も全然興味がないのに、先日ドラッグストアでピカチュウのイラストが書いてあるハンドクリームを、その可愛らしさについつい買ってしまいました。大人から子供まで、みんなを虜にする魅力が、ポケモンにはあるような気がしています。

そんなポケモンと工芸の組み合わせが、どんなふうに展開されるのか。その「世界」を見てきました。

■ 混雑状況とチケットの裏技

展覧会初日から数日後の平日、午後一に行ってきました。普段よりは人が多く、海外からのグループもちらほら。ポケモンで育ったと思われる若い人たちの姿も多く見られました。

写真は、動画以外は撮影可能でした。来館者はそれぞれなんとなく譲り合って撮る感じで、自分の好きなものを好きなように撮影できる雰囲気です。

チケット購入時は色々な割引があるため、考えるのに少し時間がかかりました。私は「北海道立美術館の相互割引」を使いましたが、お急ぎの方はあらかじめネットで購入したほうがよいかもしれません。もぎりを通る際には、平日2万名限定の展覧会オリジナルシールが貰えました。お子様が一緒の際には、お子様の分ももらえるようです。

■ 会場に入る前に、作家さんたちの「映像」を見る

城間栄一氏作成の琉球紅型着物「島ツナギ」の展示の様子

美術館について真っ先に目に飛び込んできたのは、展示作品が作られる様子を紹介する映像です。満田晴穂氏、城間栄一氏、福田亨氏、坪島悠貴氏などの手仕事を6分ほどで見ることができます。

私は展覧会場を見てからこの映像を見ましたが、作品を鑑賞した後に見ることで、感動を振り返りながら作家さんの仕事のすごさを、改めて深く感じることができました。

■ 第1パート:「すがた」 ― 工芸の力を感じずにはいられない

葉山有樹氏作成の森羅万象ポケモン壺

最初のテーマは、キャラクターそのものの形を表現した作品群です。一番最初に目に飛び込んできたのは「森羅万象ポケモン壺」。美しい文様が一面に施された優美な壺ですが、よくみるとポケモンのキャラクターが細かく描きこまれています。小さな球体の焼き物にまでポケモン文様で彩られている様に、「工芸」の凄さを感じずにはいられませんでした。

単純にそのポケモンが好き、という気持ちを通り越して、これほどの技法を駆使して、ここまで世界観をつくりあげてしまうんだ、という作家さんたちの圧倒的な技量。そこには、「たかがポケモン」という言葉を飲み込まざるを得ません。

個人的にこれはすごい!と思ったのは、福田亨氏の木工作品。160種類以上もの木材を使い分けて表現するというその作品は、「これが木で作られているのか!」と驚くほどの精緻な技です。

福田亨氏作成の共鳴の展示の様子

一寸の狂いもなく組み上げられた作品からは、日本の木工芸技術の圧倒的なすごさを知ることができます。「雨上がり」という作品では、植物の柔らかく広がる葉の表現はもちろん、その上にのった今にも転がっていきそうな雨のしずくの再現性にも驚かされます。

福田亨氏作成の雨上がりの展示の部分
福田亨氏作成の飛翔の展示風景

また、「飛翔」という作品では、羽ばたくホウオウの下に伝統技法の「組子」で作られた麻の葉模様を組み合わせています。ポケモンと工芸が違和感なく両立していることで、ホウオウが今まさに飛び立っていく様子が見事に再現されていました。優美な曲線と組子の幾何学的な直線の対比が視覚的にも面白く、同じ「木」という素材が扱い方でこれほど印象を変えるのか、と見入ってしまいました。入口でもらったシールが偶然にもこの「飛翔」だったのは、嬉しい驚きです。

福田亨氏の作品に使われる木のサンプルの展示
木材サンプルの展示。

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■ 第2パート:「ものがたり」 ― 狂わされる感覚

ポケモンの世界観に焦点を当てたパート。刺繍糸で作られた「ピカチュウの森」は、「一度入ったら出ることはできない」という注意書きに、「可愛いピカチュウも一応モンスターだからなぁ……」などと思いながら入ってみました。

ピカチュウの森が制作されるまでの過程の展示

最初は「黄色いすだれのような森だな」という印象でしたが、出口にある制作過程の展示を見て驚きました。イメージ画からデザインが膨らみ、どのような過程で「森」として育て上げられたのか。その背景を知ることで、初めてこの作品の凄さが腑に落ちるような仕組みになっています。

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そして、突然現れる大きな漆黒の物体。まるで吸い付けられるような黒さで、床に置かれた部分をみると板状のものが曲線を描いて立っているように見えるのに、上の立体部分との境目が全く見えないのです。内側に吸い込まれるような空洞を感じさせる不思議な物体は、自分の感覚が狂ってしまったような不思議な感覚を覚えた作品でした。

■ 第3パート:「くらし」 ― 江戸小紋と蒔絵の衝撃

最後のテーマでは、生活の中で使われるものにポケモンをモチーフとして取り入れる試みです。

桂盛仁氏作成の帯留ブラッキー立ち姿の展示風景

桂盛仁氏の「ブラッキー」の帯留は、ブラッキーを知らない私でも「可愛い! 欲しい!」と思ってしまうデザインでした。着物は帯留などの小物使いで着こなしに差が出ます。こうした遊び心のあるデザインは、年齢を選ばずにおしゃれを楽しめそうです。

江戸小紋のポケモン柄も、非常に素敵でした。着物は好きで何枚か持っていますが、江戸小紋はなんとなく敷居が高い気がしていました。しかし、細かく渋い柄の中に宿る上品さは格別です。「これが着こなせたら一人前だな」というのは勝手な私の印象ですが、日本が生んだかわいいキャラクターを江戸小紋で着こなす。それはもう、「かっこいい」の一言に尽きます。

田口義明氏作成の乾漆蒔絵螺鈿蓋物「遊」の展示風景

田口義明氏の蒔絵は、圧倒的な美しさでした。漆のしっとりとした塗りの中から光を放つ蒔絵や螺鈿(らでん)の煌めき。卓越した技による伝統美が凝縮されています。この作品を「ポケモンだから……」と足を運ばずに見逃していたとしたら、残念極まりなかったでしょう。モチーフを完全に昇華しきって工芸作品として完成させる。素晴らしい手仕事だと、感動せずにはいられませんでした。

■ 展示の概要(インフォメーション)

  • 展覧会名: ポケモン×工芸展 ―美とわざの大発見―
  • 場所: 北海道立近代美術館(札幌市中央区北1条西17丁目)
  • チケット: 一般 1,700円 / 高大生 1,000円 / 小中生 700円(各種割引あり、詳細は公式サイトをご覧ください)
  • アクセス: 地下鉄東西線「西18丁目駅」4番出口から徒歩5分
  • 公式サイト:北海道立近代美術館公式サイト「特別展」ポケモン✕工芸展ー美とわざの大発見ー
  • 備考: 平日2万名限定のオリジナルシール配布あり。オンライン予約がスムーズです。

■ まとめ

期待外れかも、と少しドキドキしながら足を運んだ「ポケモン✕工芸展」。実際に見てみると、素晴らしい工芸品の数々に圧倒された展覧会でした。作品だけではなく、どのような技法が使われているのか、作家さんの道具なども展示されることによって、知っているようで知らなかった「工芸」についての知識も深めることができます。

愛らしく格好いいポケモンたちは、それだけで見ていて楽しいのはもちろん、日本の伝統工芸の奥深さに改めて感動させられました。想像以上に多彩な工芸が日本に息づいていることにも驚きです。

日本の伝統技術の美しさ、素晴らしさを再発見できるこの展覧会。展覧会場にはここではまだまだ載せきれなかった、いろんなポケモンがあなたを待っています。ポケモンに興味がある人はもちろん、「興味がない」という人にこそ、ぜひ訪れてみてほしいです。あなたの好きな工芸作品が、きっと見つかるはずです。

ポケモン工芸展の会場入口の様子

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