北海道茅部郡森町にある鷲ノ木遺跡へ行ってきました!今回は、ユネスコ世界遺産に登録された縄文文化の息吹を肌で感じられる鷲ノ木遺跡の見どころと魅力を、アートの視点も交えてご紹介します。
鷲ノ木遺跡ってどんなところ?アートを感じる縄文の足跡
鷲ノ木遺跡は、2021年にユネスコ世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の関連資産として登録された、貴重な文化遺産の一つです。青森の三内丸山遺跡などと共に、約1万年続いた日本の縄文文化を今に伝えています。ここで出会う土器や環状列石からは、約4,000年前の縄文人の高い精神性と創造性を感じられますよ。
縄文人が選んだ「美」の台地
この遺跡は、北海道南部・森町に位置し、なんと高速道路の真上に広がるという非常に珍しい場所にあります。見晴らしの良い台地からは、当時、現在のような凹んだ形ではなく美しい山型だった駒ヶ岳、そして遠くの羊蹄山が対角線上に望めたそうです。古代の人々は、この壮大な自然の景色を活かし、祭祀に最適な「聖なる場」としてここを選んだと考えられています。自然と一体となった縄文人の景観に対する美意識が、この場所選びにも表れているのでしょう。
鷲ノ木遺跡への行き方・見学方法
※以下の情報は、私が2023年に鷲ノ木遺跡を見学した時点のものです。最新の見学情報や予約方法については、必ず森町公式HPをご確認ください。
私が訪問した際は、森町教育委員会社会教育課文化財保護係への事前電話予約が必要でした(日付指定で3日前まで、先着20名限定)。集合場所は森町役場で、そこからバスで10〜15分ほど移動して見学しました。
当時、役場の方からは「来年度以降は、見学者数を増やすため環境整備を進める予定」と伺いましたので、現状は変更されている可能性があります。
【最新情報はこちら】 [北海道森町鷲ノ木遺跡公式HP]
約4,000年前、縄文時代後期の「時」を感じる
鷲ノ木遺跡は、今から約4,000年前、縄文時代後期前半に作られたと考えられています。縄文時代が今から6,000年前から2,000年前とされていることを考えると、まさに縄文の最盛期に花開いた文化の跡が見られるわけです。
鷲ノ木遺跡の見どころ|縄文アートの宝庫!
鷲ノ木遺跡の主な見どころは、大規模な環状列石(ストーンサークル)、竪穴墓域、そして当時の暮らしを伝える土器や土偶などの出土品です。
圧倒され縄文人の美的センスが光る!圧倒的な環状列石(ストーンサークル)

鷲ノ木遺跡の環状列石は、中央に楕円に配置された石があり、その外側を二重に円環状に石が並べられた、外周約37m×約34mのほぼ円形の巨大構造物です。これはまさに、縄文人が作り出した壮大なランドアートと言えるでしょう。 一番外側の石は平らなものが多く、中央部に向けて面が立てて配列されています。驚くべきは、黄色っぽい石や白っぽい石など、石の色までも考えて配置されている点です。古代の人々が何らかの深い意図と美意識を持ってこの石々を並べたことは、想像に難くありません。 石の形状が丸みを帯びているため、川から運ばれてきたと推測されますが、これだけの急勾配な道を、平均40〜45cm、最大80cmもの石約600個をどうやって運んだのか…4,000年前の縄文人の知恵と労力、そして強い意志にはただただ驚かされます。


縄文縄文人の精神世界に触れる|竪穴墓域
環状列石の近くからは、副葬品を伴う墓穴も発見されています。山が美しく見え、周囲からは高台になっている場所をお墓として選ぶという点は、故人を敬い、自然と共生した縄文人の精神性を感じさせます。現代の私たちにも通じる、命の尊さや安らぎを求める感覚があるのかもしれませんね。
衝撃の遊び心あふれる縄文アート!衝撃の可愛さ「イカ型土製品」

鷲ノ木遺跡の出土品の中でも、特に目を引くのがイカ型土製品です。中が空洞で、どこからどう見ても火が通ったイカにしか見えません! 近くの海で捕れたイカを模して作られたのでしょうか。土器として使うのは難しそうですし、もしかしたら、みんなが一生懸命石を運ぶ中で、誰かがこっそりこんなユニークでユーモラスな「縄文アート」を作っていたのかもしれない…そんな想像をすると、4,000年前の縄文人と現代の私たちの中に共通する創造性と遊び心を感じ、心が和みます。これこそ、日々の暮らしの中にあるアートの原点と言えるでしょう。
遺跡の森で見つけた「現代アート」な番人「モンスターウルフ」

遺跡の周囲の森も案内していただきましたが、そこで出会ったのが熊よけの「モンスターウルフ」!近づくと目が赤く光り、耳をつんざくような金切り声で威嚇してきます。首をゆっくりと左右に振りながら雄叫びをあげる姿は、人間でも恐怖を感じるほど。 役場の方によると、熊は出なくなったそうですが、「鹿は何度か来たら慣れちゃったみたいで…賢いのか、それともバカなのか…」と笑っておられました。 この「モンスターウルフ」は、縄文の森に突如現れる、ある意味で現代の「公共アート」のような存在かもしれません。遺跡の森には栗の木が生えていましたが、これは昔の縄文人が食用として交易し、持ち込まれたものだと考えられているそうです。
高速道路建設が生んだ奇跡の発見と保存

鷲ノ木遺跡は、高速道路を建設する際の地質調査で偶然発見されました。その保存状態の良さや遺跡としての高い価値から、通常は道路建設が優先されるところを、遺跡として保存されることになったまさに奇跡の場所です。 そのため、遺跡の下にトンネルが掘られるという、非常に珍しい形態になっています。遺跡を残しながらの建設工事は、設計との誤差を上下1センチ未満に抑えるため、手掘りで少しずつ慎重に進められたそうです。この大変な工事の様子は、遺跡の前にある解説パネルで詳しく紹介されています。現代の技術と古代の遺産が共存する、ある種の「共創アート」とも言える光景です。
縄文アートをもっと深く知るなら|森町遺跡発掘調査事務所
鷲ノ木遺跡や森町内で発掘された出土品、環状列石のジオラマなどが展示されている森町遺跡発掘調査事務所もおすすめです。小さいながら展示物が豊富で、鷲ノ木遺跡の見学と合わせて訪れると、縄文文化への理解がより一層深まります。当時の道具や生活の様子から、日々の暮らしに根差した縄文人の「アート」の感覚を発見できるでしょう。



森町遺跡発掘調査事務所
- 場所: 〒049-2313 北海道茅部郡森町森川町292−24
- 5号線を南へ進み、278号線との交差点を過ぎて最初の脇道を右折。
- 開館時間: 平日午前9時から午後4時
- 休館日: 土日・祝日・年末年始(臨時休館あり)
- ※遺跡見学会が開催される土日などの休館日に臨時開館している場合があるので、事前にお問い合わせください。
- お問い合わせ先: [森町遺跡発掘調査事務所公式HP]
鷲ノ木遺跡がある森町も楽しもう!
鷲ノ木遺跡のある森町は、全国で人気の駅弁「いかめし」でも有名な町です。ぜひ立ち寄っていただきたいのが、道の駅もある「オニウシ公園」。春には桜が咲き誇ることで有名ですが、他の季節でも美しい花々や木々が楽しめる公園です。「オニウシ」とはアイヌ語で「緑(木)が多い」という意味。 森町の桜の木は、本来なら樹齢60年ほどで枯れることが多い中、100年も生きる立派な木がたくさんあるのですが、これは手入れが行き届いていることに加え、この土地の環境もあっていることが考えられるそう。桜とともに栗の木が生い茂る「青葉が丘公園」も自然の美しさを存分に感じられる場所として、大変おすすめです。
鷲ノ木遺跡のある森町までのアクセスについて
札幌から: 車で約3時間30分(高速含む)、JR特急で森駅まで約3時間。
函館から: 車で約1時間、JRで森駅まで約1時間。
森駅から森町役場までは歩いて10分ほどの距離です。
まとめ

北海道森町にある鷲ノ木遺跡は、高速道路の上にある珍しい縄文時代の世界遺産。特に環状列石(ストーンサークル)は保存状態が非常に良く、縄文人の芸術的な感性と精神性を肌で感じられます。そして、何と言っても可愛らしいイカ型土製品は、彼らの創造性とユーモアが詰まった、まさに縄文のアート作品! 桜や栗の木が生い茂る豊かな自然の中で、ぜひ縄文時代に思いを馳せ、この地で先人たちが感じた「美」の感覚、アートの原点に触れてみてください。きっと、名物のいかめしがいつもとは少し違った、特別な味に感じられるかもしれませんよ。
[鷲ノ木遺跡に関する詳細情報はこちら] [北海道森町鷲ノ木遺跡公式HP]
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