【札幌芸術の森】コスチュームジュエリー展:シャネル、ディオールに学ぶ「美の変革」と見どころ

コスチュームジュエリー ミュージアム

コスチュームジュエリーが織りなす「美」の変革

札幌芸術の森美術館で開催されている「コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより」展に行ってきました。

コスチュームジュエリーの展示

「コスチュームジュエリー」と聞いて、「仮装のためのジュエリー?」くらいの浅い知識しか持たずに行ったのですが、これが大間違い!ジュエリーの歴史を素材やデザインから再考できる、本当に見ごたえのある展覧会でした。

この展覧会は、単に美しい装飾品を眺めるだけでなく、ファッション、そして女性の生き方そのものに大きな変革をもたらしたコスチュームジュエリーについて知る絶好の機会です。特に、札幌でファッション史やヴィンテージジュエリーに興味がある方には、ぜひ足を運んでいただきたい内容でした。

コスチュームジュエリーについて詳しく知りたい方はこちら

「美の変革者たち」見どころ:時代の先を行くデザインと素材革命

シャネルとメゾン・グリポワ:「パート・ド・ヴェール」が輝く革新的なジュエリー

展覧会の序盤で真っ先に目を引いたのが、ファッション界のアイコン、ココ・シャネルと、ガラス工芸の名門メゾン・グリポワが手掛けた「パート・ド・ヴェール」とメタルによるジュエリーです。

パート・ド・ヴェール技法について詳しく知りたい方はこちら

美しく繊細な「パート・ド・ヴェール」という技法で作られたガラス素材と、しなやかな輝きの金属が組み合わされた可憐で華やかなデザインのジュエリーは、それまでのファッションの常識を覆しました。まさにコスチュームジュエリーこそが、シャネルが追求した「自由な装い」の象徴だったのです。

植物のなかでも特に、花をモチーフとしたネックレスは、それまでの豪奢な宝飾品とは異なり、まるで本物の花のような瑞々しい色遣いや優美なフォルムです。胸元を華やかに彩る繊細で軽やか、それでいて上品なデザインに、思わず見とれてしまいました。アクセサリーを身につけることが少ない私でも、思わず足を止めてしまうほど素敵なデザインです。

素材はガラスや模造パールでも、一つひとつが手作業で作られ、生産量も少ない希少なジュエリーであるため、現在でもアンティークジュエリーとして高額で取引されていることにも納得。そのデザイン性と希少価値を肌で感じられる貴重な展示でした。

ディオールを彩ったミッチェル・メイヤー:デザインが価値を高める職人技

クリスチャン・ディオールのデザイナーとして活躍したミッチェル・メイヤーのジュエリーの美しさも圧巻でした。流れるような優美な曲線に散りばめられたラインストーンの輝きは、ため息が出るほど。

高価な宝石を使っているのではなく、その卓越したデザインと装飾性の高い職人技が、ジュエリーの価値を無限に高めていることがよく分かります。たとえ素材が安価なものでも、見せ方によっていくらでも美しさを引き出すことができる——そんなデザインの力を否応なく知ることができる作品が並んでいました。

オートクチュールのドレスの美しさを際立たせるために生まれたコスチュームジュエリーは、その後、様式にとらわれることなく多くのデザイナー達の手により、ヨーロッパからアメリカへ、社交界から大衆へと広まっていきます。展覧会では、シャネルやディオールといった名だたるブランドのデザイナーの作品とともに、名は知られていないものの素晴らしい技術やデザイン性を持ったデザイナーや職人たちの手掛けたコスチュームジュエリーが数多く紹介されており、まるで宝飾店をはしごしているような気持ちで観ることができました。

それぞれのデザイナーごとのキャプションも読み応えがあり、ジュエリーを通したデザイン史をたどると同時に、それまで男性主権で表舞台に立つことが少なかった女性たちが、ジュエリーの広がりと共に個々の自分を表現していく社会の流れを感じることもできました。これは、ファッション史や女性のエンパワメントに興味がある方にも深く響く内容でしょう。

ファッションアイコンも愛した輝き:ジャッキー・ケネディのコスチュームジュエリー

ケネディ大統領の元妻で、後に大富豪アリストテレス・オナシスと再婚したジャクリーン・ケネディ・オナシス(ジャッキー)が身につけたコスチュームジュエリーも、この展覧会の見どころの一つ。

オナシスから贈られた本物の宝石を使ったアクセサリーと同じデザインで作られたイミテーションを身に着けていたという逸話には驚きです。本物は銀行で厳重に保管され、イミテーションを日常的に着用していたというのですから、当時のセレブリティがいかにコスチュームジュエリーを実用的な「美」として捉えていたかが分かります。

確かに、あまりに高価なものは、紛失や盗難の心配がつきもの。そればかり気にしてしまっては、せっかくの晴れやかな気分も台無しになってしまいます。アクセサリーは自分を引き立ててくれるものであるべきで、主役になってしまっては本末転倒なのかもしれません。ジャッキーのこのエピソードは、コスチュームジュエリーがもたらした「精神的な自由」を象徴しているとも言えるでしょう。

時代を象徴するドレスとジュエリーの競演:写真撮影可能エリアも!

ディオールのドレスとコスチュームジュエリー

展示の後半には、写真撮影が可能なエリアも設けられていました。

サンローランのスーツや、ディオールのドレス、シャネルスーツなどの時代を象徴する洋服とともに、コスチュームジュエリーが美しく展示されています。ハイブランドのジュエリーや洋服を間近で見る、またとない機会でした。洋服はどちらかといえば、シンプルで定番のスタイルのものが並んでいましたが、これにジュエリーを合わせることで、ぐっと華やかになる様子がありありと想像できます。

展示された組み合わせの他にも、自分らしい好きなジュエリーを組み合わせることで、色々な着こなしができるという、ファッションの楽しさを再認識させてくれる展示なので、ファッションや歴史に興味がある方には、是非おすすめしたい展覧会です。

展示の最後には、3人のデザイナーの言葉が並びます。スキャパレッリ、ディオール、そして私が一番心に残ったのは、ガブリエル・シャネルの次の言葉です。

コスチュームジュエリー展デザイナーたちの言葉

この世でいちばん
素晴らしい色は、
あなた自身を
輝かせる色。

ガブリエル・シャネル

この言葉は、まさにコスチュームジュエリーが目指した「自由な装い」と「個性の輝き」を象徴しているように感じました。

混雑状況

日曜日の昼下がりということもあり、人出は結構ありましたが、作品をひとつひとつ鑑賞することは可能でした。通路が広い箇所も多いため、比較的ゆったりと見学できると思います。

展覧会の所要時間

約1時間。じっくりとキャプションを読んだり、写真を撮ったりする時間を含めて、1時間半から2時間程度を見ておくと良いでしょう。


観覧料

【コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、ディオール、スキャパレッリ 小瀧千佐子コレクションより】

一般: 1,600円  高校・大学生: 1,000円  小・中学生: 500円

※公式情報をご確認ください。前売り券や各種割引がある場合もあります。

会期&開館日・開館時間

  • 会期: 2025年4月19日(土)〜6月22日(日)
  • 開館時間: 9:45〜17:00 (入館は16:30まで) ※6月は17:30閉館
  • 休館日: 4月21日(月)、4月28日(月)※公式情報をご確認ください

アクセス&駐車場情報

  • 会場: 札幌芸術の森美術館
  • 住所: 〒005-0864 札幌市南区芸術の森2
  • 地下鉄: 地下鉄南北線「真駒内駅」から、中央バス「芸術の森センター」行き乗車、終点下車(約15分)。
  • 車: 札幌中心部から約30分。敷地内に有料駐車場あり。
    • 普通車:500円/回 ※公式情報をご確認ください

周辺施設

札幌芸術の森には、美術館の他にも野外美術館やクラフト工房、レストランやカフェ、ショップなど様々な施設があります。展覧会鑑賞後には、広大な敷地を散策したり、お土産を探したりするのもおすすめです。特に天気の良い日には、札幌芸術の森 野外美術館も合わせて訪れると、一日中楽しめます。

コスチュームジュエリー展で「輝く私」を見つけるひととき

札幌芸術の森美術館で開催中の「コスチュームジュエリー 美の変革者たち」展は、単なる装飾品の展示に留まらず、ファッションの歴史、女性の生き方、そして「美」の概念そのものに深く切り込む、非常に示唆に富んだ展覧会でした。

シャネルディオールといったトップメゾンのコスチュームジュエリーが持つ革新性、素材の常識を覆すデザインの力、そしてそれらがどのようにして社会に浸透し、人々を輝かせてきたのかを、展覧会を通して知ることができます。特に、ヴィンテージファッションやジュエリーに興味がある方には、心からおすすめしたい内容です。

「一番素晴らしい色は、あなた自身を輝かせる色。」ガブリエル・シャネルの言葉が示すように、この展覧会は、訪れる人それぞれが自分らしい輝きを見つけるためのきっかけを与えてくれるはず。

ぜひこの機会に、札幌芸術の森美術館へ足を運び、きらめくコスチュームジュエリーの世界をご堪能ください。きっとあなたのファッション観、そして美意識に新たな風を吹き込んでくれることでしょう。


コスチュームジュエリー展

コメント

タイトルとURLをコピーしました