北海道立近代美術館「おはなし美術」展レポート|天売島の青とどさんこの記憶に触れる

海道立近代美術館「おはなし美術」展の公式フライヤー ミュージアム

はじめに:春の訪れを感じる美術館

日差しの柔らかな休日、北海道立近代美術館で開催されていた「おはなし美術 The Art of Stories」に行ってきました。春の訪れを予感させる楽しげなフライヤーに誘われ、会期終了間際での滑り込みです。

今回の展示は、物語(おはなし)をキーワードに、絵本原画や版画、絵画、彫刻など多岐にわたるコレクションが紹介されていました。

展示室1階:絵本原画と物語の世界

天売島のウミガラスと青い海が描かれた絵本原画の展示風景

天売島の「青」に魅了される:絶滅危惧種と自然の記録

展示室の冒頭を飾るのは、天売島(てうりとう)を舞台にした絵本の原画です。天売島は日本海側に位置し、隣の焼尻島とともに絶滅危惧種のウミガラス(オロロン鳥)などの貴重な海鳥が営巣する離島として知られています。

【色彩の観測】 私自身も訪れたことがありますが、原画に描かれた「空と海の青」の表現は、現地の空気感を見事に捉えていました。特に夕暮れ時を描いたと思われる、紫色がかった波間の描写には目を奪われます。実際の景色を見たときのような感動が、絵の具の層から伝わってくるようでした。

農耕馬「どさんこ どんぺい」が語る、北海道の近代化

農耕馬「どさんこどんぺい」の絵本原画の展示風景

馬の「どんぺい」を主人公とした「どさんこ どんぺい」の絵本原画では、機械化が進む前の北海道の暮らしが描かれていました。

【歴史的視点】 今では見ることが少なくなった農耕馬の視点から、時代の移り変わりを眺める構成です。写実的で説得力のある描写は、当時の暮らしの近代化への移り変わりや馬との共生を静かに物語っており、子どもから大人まで深く感情移入させる力がありました。

「振り向けば猫」に見る、失われた商店街の風景

個人的に非常に興味深かったのが、版画作品「振り向けば猫」です。街のあちこちに潜む猫を探しながら、かつての「〇〇屋さん(判子屋さん、筆屋さん、卵屋さんなど)」を巡る構成になっています。

幼い頃、商店街に住んでいた私にとって、この作品はノスタルジーそのものです。次はどのお店?猫はどこ?と次から次へと作品へ目を移す楽しさに、子どもにかえって町を歩き回ったかのような気持ちになりました。

マックス・クリンガー「手袋」の連作

ドイツの画家マックス・クリンガーによる「手袋」にまつわる版画シリーズも印象的でした。好意を寄せる女性が落とした「手袋」をモチーフにした作品群。その執着や空想の展開には、思わずニヤリとしてしまうような独特のユーモアが漂っていました。

展示室2階:カラー・オブ・グラス

ガラスの色彩美:岩田一族から19世紀のエレガンスまで

19世紀イギリスの工房で作られたワイングラスの展示風景

2階では「カラー・オブ・グラス」と題し、ガラスの色彩美に焦点を当てた展示が行われていました。

【岩田一族の系譜】 先日の「イワタルリ展」で展示された、岩田家の方々の作品も並んでいました。これはお祖父様の作品かしら、それともお父様、お母様のかしら……と、その作風を探るような楽しみ方は、コレクション展ならではの醍醐味です。

【今回のお気に入りの逸品】 心惹かれたのは、19世紀イギリスの工房で制作された、淡い緑色のワイングラス。手の中におさまるくらいの小ぶりなサイズで、グラスに施された繊細なエングレーヴィングによる装飾がとてもエレガント。ガラスの美しさを引き立てる白ワイン、ガラスの色に深みを与える赤ワイン、どちらも美味しくいただけそうでした。

他にも通年展示されている青木美歌さんの「未生命の遊槽」は、何度見ても見飽きない不思議な造形とガラスを通した光の美しさを放っていました。

まとめ:誰かと語り合える展覧会の形

春休みということもあり、会場には親子連れの姿も多く見られました。「静かに鑑賞する」というよりは、タイトル通り、作品を通したそれぞれの「おはなし」を家族で語り合いながら楽しむことができる展覧会でした。

一人でじっくり観測するのはもちろん、誰かと感想を分かち合いたくなる。そんな豊かな時間を過ごすことができました。

【展覧会情報】

  • 展覧会名: おはなし美術 The Art of Stories
  • 会場: 北海道立近代美術館(札幌市中央区北1条西17丁目)
  • 会期: 〜2026年4月12日(日)まで ※残りわずかです!
  • 観覧料: 一般 510円、高大生250円
  • アクセス: 地下鉄東西線「西18丁目駅」4番出口から徒歩5分
  • 公式サイト: [おはなし美術]

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