【札幌2025】北大総合博物館「人文的昆虫展覧会」レビュー:虫が苦手でも楽しめる!文学・芸術・神話から広がる美しい昆虫の世界

ヘルマン・ヘッセ 直筆水彩画 蝶 人文的昆虫展 ミュージアム
北大総合博物館 人文的昆虫展 展示風景

北海道大学総合博物館で現在開催中の「人文的昆虫展覧会」。会場に入った瞬間、目に飛び込んできたのは、まるで生きているかのような美しい蝶の展示でした。「なんてきれいなんだろう!」と思わず息をのむほどの感動。昆虫を単なる生物学的な視点だけでなく、文学、芸術、神話といった人文科学の視点から深く掘り下げた、非常にユニークな企画展です。札幌にお住まいの方も観光で訪れる方も、虫が苦手な方でも楽しめる、大人向けの知的好奇心をくすぐる展示内容でした。

展覧会概要:文学、芸術、神話、そして学術が交錯する昆虫の世界

この展覧会は、4つの異なるカテゴリーで構成されており、それぞれが昆虫の新たな魅力を教えてくれます。

ヘルマン・ヘッセ〜少年の日の思い出〜

北大総合博物館 人文的昆虫展 ヘルマン・ヘッセ 蝶

ノーベル文学賞受賞作家ヘルマン・ヘッセ。彼の作品「少年の日の思い出」は、日本の多くの小学生が国語の教科書で触れてきました。このセクションでは、多感な少年時代のヘッセの日常をもとにした作品や、誰しもが共感するほろ苦い感情が描かれた作品が紹介されています。

実は、ヘッセは昆虫採集、特に蝶の採集をこよなく愛していました。その情熱が垣間見える彼の文学作品。言葉と言葉の間から生まれる文学の世界を華麗な蝶々が彩る、非常に美しい展示となっています。

ヘルマン・ヘッセ 直筆水彩画 蝶 人文的昆虫展

特筆すべきは、ヘッセ直筆の水彩画の展示です。躁うつ病の治療と収入のためという2つの理由から描かれたこれらの水彩画は、原画が日本にわずか2点しか現存せず、そのうちの1点がこの展覧会で公開されています。これはまさに必見。 また、ヘッセが見ていたという当時の図鑑と同じ図版も展示されており、ヘッセの視点を追体験しながら昆虫画を見ることができます。

2. メーリアンの立体昆虫図譜

マリア・メーリアン  人文的昆虫展

1705年、女性の地位が極めて低く、昆虫は「泥から生まれた」と信じられていた時代に、マリーア・ズィビラ・メーリアンという一人の女性がいました。彼女は昆虫の変態に強い興味を抱き、観察の結果を「スリナム産昆虫変態図譜」として発表しました。

マリア・メーリアン スリナム産昆虫変態図譜 人文的昆虫展

このセクションでは、メーリアンが描いた、昆虫とそれに関連した植物が卵から幼虫、蛹、そして成虫へと変態していく様子を一枚の絵に収めた作品がずらりと展示されています。色彩豊かで、植物や昆虫それぞれの特徴をよく捉えた図は、その芸術的価値の高さに圧倒されます。 実際に展示されている原書は、とても大きなもので日本語版ではA3に縮小して作成されたそう。研究者目線では日本語版の昆虫画のほうがより正確だそうですが、初期に制作されたものは、アート作品としての美しさを感じさせました。大人向けの展示ということでしたが、色彩豊かな図版は居合わせた小さなお子さんたちからも「わあ、きれい!」と歓声があがるほど魅力的です。

昆虫の学名に隠された神話と星座:ギリシャ神話や手塚治虫のエピソードも

 昆虫 学名 神話由来 展示 人文的昆虫展

昆虫の学名には、驚くほど多くの神話にまつわる名前が付けられているのをご存知でしたか? このコーナーでは、昆虫の標本とともに、その名前の由来となった神話や星座が解説されています。

一つ一つの名前の由来には「なるほど!」と感心させられる内容ばかりで、まるでギリシャ神話を読み解くように、虫ごとにその背景を楽しむことができます。 手塚治虫が虫好きだったことは有名ですが、彼が創作したキャラクター「リボンの騎士」にまつわるエピソードなども紹介されており、非常に内容が濃く、すべてのエピソードに目を通したくなるほど面白い内容でした。

北海道大学昆虫学の歴史:著名な研究者と著書から知る学術の深み

札幌農学部時代から続く、由緒ある北海道大学の昆虫学分野に焦点を当てたセクションです。農学部昆虫学教室初代教授の松村松年をはじめ、昆虫界隈で著名な昆虫学者とその著書が展示されています。

ヘッセが少年時代に抱いた昆虫採集への熱い思いを、大人になってからも持ち続け、儚い少年時代の夢を現実の科学分野で追求した研究者たちの著書と、ヘッセの文学が対比されているようで非常に興味深いです。会場を一周した後に、もう一度ヘッセのコーナーに戻りたくなるような、子供時代から大人への成長、そして大人になった現在からの少年時代の郷愁へと、知識と感情が交差していく不思議で面白くとても見応えがある展覧会でした。

「人文的昆虫展覧会」講演会レビュー:虫嫌いでも楽しめる理由とは?

展覧会初日に開催された講演会では、今回の企画展の趣旨が解説されました。科学は自然科学(答えがひとつ)、社会科学(答えが変わる)、人文科学(答えがない)の3つに分けられるというお話になるほどと納得。そのなかで昆虫は一般的に自然科学の対象とされます。しかし、それをあえて「人文的」な視点で展示するとはどういうことなのか?

講演では、「見る人によって感じ方の違う展示になる」「虫が苦手な人でも楽しめる」「大人向けの展覧会」という点が強調されました。まさにその言葉通り、生物学的な知識がなくても、文学や芸術、神話という入口から、今までとは異なる視点で昆虫の世界に触れることができる、間口の広い展覧会だと感じました。

「人文的昆虫展覧会」所要時間と快適な観覧方法:休憩スペースも活用しよう

北大総合博物館 人文的昆虫展 展示風景

ヘッセと神話のコーナーは読み応えのある解説が多いので、じっくり読むと1〜2時間はあっという間に過ぎてしまいます。展示室には座れる場所が用意されているので、ゆっくり休みながら、自分のペースで展示を楽しむことができます。一度見た後に、もう一度展示を見直してみることで、新たな発見ができる長期滞在型の展示です。

展示室の外には博物館のカフェや飲食スペースなどもあるので、そちらを活用するのもおすすめです。

北大総合博物館「人文的昆虫展覧会」基本情報:会期・時間・アクセス・駐車場について

観覧料: 入場無料

会期:2025年6月28日(土)〜8月31日(日)

開館時間: 10:00〜17:00

休館日: 月曜日 (祝日の場合は翌日休館)

場所: 北海道大学総合博物館 1階 企画展示室

アクセス&駐車場情報

北海道大学総合博物館へのアクセスは、JR札幌駅から徒歩約10分、地下鉄南北線「北12条駅」から徒歩約5分と非常に便利です。駐車場については、大学構内への一般車両の乗り入れは原則として禁止されていますので、近隣の有料駐車場をご利用いただくか、公共交通機関のご利用をおすすめします。

住所:〒060-0810 北海道札幌市北区北10条西8丁目

まとめ:知的好奇心を満たす、札幌の夏休みにぴったりの無料展覧会

北海道大学総合博物館 人文的昆虫展 2025 ポスター

札幌の北海道大学総合博物館で開催されている「人文的昆虫展覧会」は、昆虫という一つのテーマを、文学、芸術、神話、そして学術という多角的な視点からアプローチした、非常に奥深く、知的好奇心を刺激される展覧会でした。

昆虫が苦手な方でも、ヘルマン・ヘッセの美しい文章と蝶の共演、メーリアンの息をのむような昆虫図譜、そして昆虫の学名に隠された壮大な神話の世界など、あらゆる角度からその魅力に触れることができます。特に、無料でヘッセ直筆の水彩画が見られる機会は滅多にありません。

2025年の夏休みの期間中(8月31日まで)開催されていますので、札幌観光の際にはもちろん、地元の方もぜひ、このユニークな昆虫の世界を体験しに足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと、これまでとは違う昆虫の姿を発見できるはずです。

あなたも、この夏、北大博物館で「人文的昆虫展覧会」の魅力を体験してみませんか?

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