2024年10月26日から2025年1月13日まで開催された北海道博物館企画テーマ展「北海道のお葬式」。
近年、コロナ禍を経て家族葬が一般的になり、参列者としてお葬式に参加する機会は以前に比べかなり減りました。そんな中、博物館の企画として「北海道のお葬式」が取り上げられていることを知り、興味津々で足を運んできました!
「北海道のお葬式」企画テーマ展の展示概要
本展は、大きくアイヌのお葬式と和人のお葬式の2つの構成に分かれています。展示物だけでなく、詳細な解説パネルや写真が掲示されており、非常にわかりやすい内容でした。
第1章 アイヌのお葬式


縄の中心を額に当てて、頭と背中で荷物を背負う。
アイヌの人々は、死者があの世でも困らないようにと、生前使用していたものを実際よりも小さく作り、お葬式に用いていました。植物から採取された繊維で制作されたこれらの品々は、生きているうちから各家庭に用意されていたそうです。会場には、数多くの葬儀用の荷縄や脚絆などが展示されており、同じ種類のものが一箇所に整然と並べられている様子に、静かな迫力を感じました。

アイヌのお葬式は伝統的な様子が研究対象とされたため、実際のお葬式ではなく再現したものを写真に撮っていたこともあったようです。アイヌの人々と和人の死者への弔い方が異なることから、当時の和人の研究者はアイヌの文化を「非文化的」とみなしていたといいます。このような調査に対し、アイヌの人々の中には反発する意見があった一方で、自分たちの文化を知ってもらおうと積極的に研究に協力していたアイヌの方もいたことに触れた展示は、異なる文化を調査する際の難しさ、そして研究者自身の盲点にも鋭く光を当てていました。
第2章 和人のお葬式


一方、和人のお葬式は研究対象として記録されるというよりも、あくまで日常生活の延長として残されているものが大半を占め、帳簿のように文字で残っているものがほとんどでした。特に印象的だったのは、丸井今井デパートの創業者である丸井藤七氏のお葬式に関する記録です。なんと1500人もの人が参列したという当時の様子が記されており、その規模に驚きました。
道内のお葬式を記録した映画も上映されており、約6分半と約3分半の動画は椅子に座って鑑賞できます。そのため、まるで自分も参列しているかのような臨場感を味わうことができました。
番外編:2階の企画展会場を出て中地下1階のはっけん広場で体験しよう!

2階の展示室を出て中地下1階へ向かうと、昔の道具や生活を体験できる「はっけん広場」があります。アザラシや熊の毛皮に触れてみたり、ニシン漁で使われたモッコ(ニシンを運ぶための木の箱)があったりします。
その中で、企画展で観た「荷縄」と同じものを見つけました!実際に背負ってみると、重い荷物を運ぶために工夫された道具だとよくわかります。熊に出くわした際には素早く頭を振って荷物を落とし、逃げることができるように作られているそうですよ。展示で観たものを実際に体験できるのは、知識が深まり、とても面白いですよね。
混雑状況
日曜日のお昼頃に訪れました。会場内には数名の人しかおらず、解説パネルはひとつひとつしっかり読むことができました。年配の方が懐かしそうに動画を見ている姿が印象的でした。
所要時間
パネルによる詳細な解説や、文化の異なるアイヌと和人それぞれのお葬式の流れを説明した表などがあります。じっくり読むと30分くらいは必要でしょう。会場で流れていた3本の動画は、全て観ると15分くらいかかるかもしれません。
入場料
無 料
※北海道博物館の常設展示室をご利用の際には別途入場料が必要です。
北海道博物館公式サイト利用案内はこちらへ。
会期&開館日・開館時間
会 期:2024(令和6)年10月26日(土)~2025(令和7)年1月13日(月・祝)
時 間:9:30~16:30(入場は閉館の30分前まで)
休館日
毎週月曜日(11月4日(月・振)
2025年1月13日(月・祝)は開館)
11月5日(火)、12月19日(木)、12月20日(金)
12月29日(日)~2025年1月3日(金)
アクセス&駐車場情報
北海道博物館 2階 特別展示室
〒004-0006 北海道札幌市厚別区厚別町小野幌53−2
TEL:011-898-0466
公共交通機関で行く場合
■地下鉄新さっぽろ駅・JR新札幌駅から
バスターミナル・のりば10(北レーン)
ジェイ・アール北海道バス新22「開拓の村行き」に乗車し、「北海道博物館」で下車。
バスの乗車時間は約15分。
■JR森林公園駅から
ジェイ・アール北海道バス新22「開拓の村行き」に乗車し、「北海道博物館」で下車。
車で行く場合
■札幌駅から車で約40分
駐車可能台数:105台
身障者用駐車場:10台
利用時間:9:00~17:00
利用料金:無料
野幌森林公園内の駐車場が利用可能
周辺施設
野外博物館北海道開拓の村
野幌森林公園
まとめ

お葬式というキーワードを通して、アイヌ文化と和人の文化が共存してきた北海道の歴史を振り返る企画テーマ展「北海道のお葬式」。
「アイヌはお墓参りをしない野蛮な人種だ」という過去の和人の言葉からは、自分たちの文化が絶対的だと信じるが故の近視眼的なものの見方が見て取れます。しかし、この見方を安易に「視野が狭い」と批判することができるでしょうか。果たして今の私たちが、当時の彼らとは違って広い視野をもって物事を判断できている、と自信を持って言えるでしょうか。
時間が経つことによって過去が陳腐化するのは常ですが、「今」という時が常に過去になり続けることを鑑みれば、私たちは常に「今」の自分に懐疑的であるべきなのではないでしょうか。
展示スペースはコンパクトでしたが、来場者に様々な問いを投げかける、非常に考えさせられる「北海道のお葬式」展でした。
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