先日、函館美術館で開催中の常設展「ミュージアム・コレクション:カタチのチカラー道南の彫刻ー展」を観てきました。オーソドックスな彫刻作品が多いのかとおもいきや、全く想像していなかった現代アート、九千房政光氏の仏像彫刻のコレクションがとても印象的で衝撃的でした。会場には偶然にも九千房政光氏ご本人が来場され、直接お話を伺うこともできました。個人的な感想に加え、ご本人に伺った彫刻秘話もご紹介したいと思います。
開催情報
施設名 函館美術館(常設展示室)
展覧会名 ミュージアム・コレクション カタチのチカラー道南の彫刻ー
期間 2025年9月20日(土)〜11月30日(日)
住所 〒041-0851 北海道函館市五稜郭町37-6
アクセス 函館駅よりバスで約20分
九千房政光氏の仏像が持つ「カタチのチカラ」

九千房氏は函館市の公立中学校で教鞭をとる現役の美術教師。ちょうど指導されている美術部員の方たちと会場にいらしていました。本記事に掲載している作品写真は、九千房政光氏ご本人から撮影許可をいただいております。
彼の仏像彫刻が持つチカラ、それは「伝統的な仏像のテーマを、現代的な美しい容姿に徹底的に落とし込んでいる点」にあります。従来の仏像のイメージを持つ鑑賞者ほど、その予想を裏切る現代的なアプローチに衝撃を受けるはずです。
【制作秘話とレビュー】煩悩か解脱か、美しい仏像たち
ご本人から伺ったお話や、私の個人的な視点から、展示されていた作品についてご紹介します。
菩薩立像:艶めかしい美しさが悩ましい

ヤフーニュースにも取り上げられたという作品。九千房氏によると一番時間がかかった作品で、もとは裸体の人物像にFRPで装飾品や衣服を作成した後、組み合わせたそうでとても大変だったそうです。左手に持つ一輪の蓮の蕾が、艶かしさを強調しています
胸元から膝下まで垂れ下がる装飾品は、下の衣服のはだけを隠すようでありながら、その姿が逆にいやらしさを助長しているような…。この絶妙なバランスに、煩悩を抑えているのか、それとも呼び起こされているのか、悩ましくなってしまう作品でした。
(解説:菩薩は修行中の姿で豪華な装飾を身につけるのが特徴)
弥勒菩薩胸像:「ごめんね〜!まった?」と優しく微笑む像

手を合わせながら左に顔を向けている姿は、まるでこちらに向かって「ごめんね〜!まった?」と、少しお茶目に言っているよう。
かと思えば、「どうした?大丈夫?」と優しく微笑んでいるようにも見えます。いずれにしても、その表情からは「私は悪いことなんてしてません」というどこか大らかな「悪いことしてません感」が滲み出ていて、見ていて癒やされます。
(解説:弥勒菩薩は遥か未来に人々を救済すると約束された仏)
毘沙門天頭像:強い決意か、大胆不敵な笑みか

少し乱れた前髪から、正面をまっすぐ見つめる眼差しが鋭い!
固く結ばれた口元は、よく見ると口角がわずかに上がっています。これは「強い決意」の表れなのでしょうか?それとも、すべてを見透かした上での「大胆不敵な笑み」なのでしょうか。その表情から、底知れない迫力が伝わってきました。
(解説:毘沙門天は北方を守護する武神・戦いの神)
弥勒菩薩坐像:石原さとみ似の優しい微笑み

この菩薩様を見た瞬間、女優の石原さとみさんに見えてきました!(個人的な感想です)
片膝を立ててにっこり微笑む姿は、目の前で思わず懺悔してしまいそうになるほどの優しい笑み。しかし、よく見ると眼差しは鋭く、「嘘はつかせないよ」とでも言いたげな強さも同時に感じられる、魅力的な作品です。
(解説:生徒さんたちと会場にいらした九千房氏)
大日如来胸像:太陽のような慈悲と絶妙なバランス

「大日如来」という名前に相応しく、暖かい太陽のような慈悲が溢れる胸像です。
首飾りと衣服のバランスが絶妙で、「見せているけど見せていない感」がすごい。この「見せすぎない美学」に、はっとさせられました。
(解説:大日如来は宇宙の真理そのものを表す最高位の仏)
聖観音菩薩像:広瀬すず似のゴージャスな生命力

他の作品とは少し違うタイプ。広瀬すずさん似の目元涼しげなニューハーフのような菩薩像です。(これもまた個人的な感想です)
髪の毛が金色に輝き、全体的なゴージャス感がすごい!装飾品のキラキラが瞳に映り込んでいるのが印象的で、一番作り物っぽいのに、なぜか一番生々しく、まるで生きているかのような生命力を感じる作品でした。
(解説:観音菩薩は人々の救いを瞬時に叶える慈悲の仏)
まとめ:自分だけの視点で美術を楽しむ

仏像や彫刻というと堅苦しいイメージがありますが、九千房氏の仏像はその美しさに圧倒されます。石原さとみ似だったり、松本まりか似だったり、九千房氏によると綾瀬はるかに似ている、という声もあるそう。
美術品を自分だけの視点で楽しむことの面白さを再認識させてくれる、大変刺激的で興味深い展覧会でした!ぜひ、皆さんもご自身で「カタチのチカラ」を体感しに行ってみてくださいね。

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