札幌グランドホテルの1階ロビーにあるGRANVISTA GALLERY SAPPOROで2025年11月6日(木)から2026年1月6日(火)まで開催されている、「温もりのbrocante(ブロカンテ)」 。円山西町にある「flou(フロウ)」のオーナーでもあるオオニシアツミさんの個展です。歴史を感じさせる重厚感のあるホテルのロビーの奥に温かな光で照らされたギャラリーは、まるでそこだけ天使が降りてきたような温かな空気が満ちていました。その作品は、まさにサブタイトル「古道具と店主が紡ぐ物語」を体現しています。
✍️ オオニシアツミ氏に聞く:制作手法と古道具に込める想い

会場にはオオニシさんが在廊されており、次のような制作に関する貴重なお話を聞くことができました。
額から決めるユニークな制作プロセス
大抵の作品は制作された後に額が選定されますが、オオニシさんの作品はその反対で、まず既製品の額を採用し、その枠に合わせて作画するというユニークな手法で生まれます。
技法は、下絵などを設けずにモチーフを見ながらハサミで紙を切り、それを貼っていくというものです。作品に使われているのは、昔の楽譜などの古い紙で、古道具を蒐集していると自然に集まってくるそう。それらのパーツはすべてフリーハンドで切り出され、そこにクレヨン(オイルパステル)で色付けがされます。
「一発勝負で貼っていく瞬間が、一番たいへん」
少しでもバランスが悪いと感じたときは、文字やちょっとしたパーツを貼ることで全体のバランスをとっているとのこと。この緻密さと大胆さが、作品に独特の魅力を与えているのでしょう。なかにはよく見ると文字が反対になっているものも。でもひとつの作品になると全く違和感がないところが絶妙です。
モチーフは古道具(ブロカンテ)の物語


オオニシ氏は、元々経済学部出身で、その後にセツモード学園で学んだという異色の経歴を持ちます。
作品のモチーフとなる古道具は多岐にわたり、日本の古いお稲荷さん、日本の体積の勉強に使われる10センチ四方の立方体(教材)、フランスの元素の教材など、非常にニッチで興味深いものが含まれます。


日本のものも西洋のものも好きで、「好きなので、話をしていたらそのもののいわれなどがわかる」とおっしゃるオオニシさん。例えば、ダーニングマッシュルームかと思っていたものが、帽子置きであることが買い付け時にわかったなど、古物への深い愛と知識が、作品のインスピレーションの源になっていることが伝わってきました。
「見ていてとても楽しくなる、明るい気持ちになれる。そんな気持ちで作っているし、そんなふうに思ってもらえたらとても嬉しい」という言葉は、まさに個展のタイトル「温もりのbrocante(ブロカンテ)」そのものです。
少年時代の物語をのせた「ツバメ」の絵

パースが歪んでいたり、縮尺が微妙にずれていたりするのに、どの絵をみていても不思議な魅力に溢れていて、ひとつひとつの絵がとても個性的な作品たち。特に印象的だったのは、「少年のある日のノートに描かれたツバメ」の作品です。
切り絵で表現されたツバメは、古びたノートの紙面から飛び出し、少年の日の思い出を乗せて新しい空へと舞っていきそうな、子供の頃に感じた好奇心や、明日への希望を感じる軽やかな作品でした。
誰かのことを思い出してプレゼントしたくなるようなクリスマスにぴったりな作品も多く、この寒い季節にギャラリーの温かい光の中で作品を鑑賞すると、心もほんわりと温まってくるようでした。
✅ 個展「温もりのbrocante」開催概要
| 展覧会名 | ATUMI ONISHI SOLO EXHIBITION 温もりのbrocante ー古道具と店主が紡ぐ物語 |
| 作家名 | オオニシ アツミ/ 古道具屋 flou オーナー |
| 会場 | GRANVISTA GALLERY SAPPORO (札幌グランドホテル 1階ロビー) |
| 住所 | 〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西4丁目 (札幌グランドホテル) |
| 会期 | 2025年11月6日(木)〜 2026年1月6日(火) |
| 休廊日 | 土・日・祝日 |
| 開廊時間 | 11:00 〜 19:00 (最終日は17:00まで) |
| 観覧料 | 無料 |
| 在廊情報 | 詳細については、Instagram(Insta@flou_grafitis)をご確認ください。 |
🚌 アクセス情報:グランビスタギャラリーサッポロGRANVISTA GALLERY SAPPORO
札幌グランドホテルは札幌駅からも大通駅からも近く、非常に便利な場所にあります。
GRANVISTA GALLERY SAPPOROは、札幌グランドホテルの1階ロビーにあります。
公共交通機関をご利用の場合
| 交通手段 | 詳細 | 所要時間 |
| JR線 | JR札幌駅下車。南口から徒歩10分。 | 10分 |
| 地下鉄 | 「さっぽろ駅」または「大通駅」下車。 | |
| 地下歩行空間(チ・カ・ホ)で直結しています。 |
・ポイント: 天候に関わらず、札幌駅・大通駅のいずれからも地下歩行空間(チ・カ・ホ)を利用して濡れずにアクセス可能です。チ・カ・ホの9番出口からホテルに直結しています。
お車でお越しの場合
・住所: 〒060-0001 北海道札幌市中央区北1条西4丁目
・駐車場: ホテル地下に契約駐車場があります(有料)。
・割引について: ホテル内の施設利用に応じて割引サービスがあります。ギャラリーの利用が割引対象となるかについては、事前にホテルまたはギャラリーへご確認いただくことをお勧めします。
✨ 鑑賞後に行きたい:アンティークショップ「flou」の魅力

古道具・アンティークショップの店主であるオオニシアツミさんの個展「温もりのbrocante」は、単なるアート作品の展示に留まらず、古道具に込められた「物語」を静かに再構築し、私たちに提示してくれる特別な空間でした。
フリーハンドの切り絵とクレヨンという素朴な技法から生まれる作品群は、描かれているモチーフが持つ歴史の重みとは裏腹に、温かく、どこか楽しげな空気を放っています。それは、「見ていてとても楽しくなる、明るい気持ちになれる」というオオニシさん自身の言葉が、そのまま形になったかのようです。
札幌グランドホテルの重厚なロビーの奥で出会うこの温かい光に包まれた作品たちは、私たちが日常で何気なく見過ごしてしまう「物」と「時間」の美しさを、改めて教えてくれます。
オオニシアツミ氏のフィルターを通した古道具の素敵な世界観。ぜひ足を運び、その「温もり」を感じてみてください。鑑賞後には、円山西町のアンティークショップ「flou(フロウ)」を訪れて物語の源泉である古道具たちを眺めてみるのもおすすめです。





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